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zoom RSS 2009.5.6 注連石と鬼のカケハシ(山形・弁慶山地)

<<   作成日時 : 2009/05/09 17:33   >>

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3月に登った弁慶山地(出羽丘陵)の最高峰:弁慶山。その登山ルートを検討して地形図を読んでいると北部に「注連石」という地名が目に飛び込んできた。急に興味が沸きネット検索で調べてみると「碧落の彼方blog」と言うサイトにたどり着く。このブログを開設されている方は、庄内地方の秘境探訪をライフワークにされていて、その一編で現在は道がなく、かつ何らの資料もない注連石の所在地を踏査していたのである。
「凄いところみたいだ?これは早速行かねば!」 そこで薮山や秘境に目が無い面々を誘って出かけてみた。
薮山の奥深くに隠されたその場所は、神の存在を感じさせる様な現世と天界の狭間だったのである。

【 5/6 注連石(650m?)と鬼のカケハシ (山形・弁慶山地) 】
大禿沢林道車両進入不可地点〜林道終点〜トイシ沢とカラマツ沢合流点〜西尾根経由:647m峰〜蟻の戸渡り(仮称)〜注連石(往路を戻り)〜トイシ沢とカラマツ沢合流点〜鬼のカケハシ(往復)〜林道終点〜駐車地点

注連石と書いて「すみいし」と呼ぶ。神社に於ける神域との結界に注連縄を張るが、この場所は現世と天界との結界を示す場所なのだろうか?東北地方の方言では「し」を「す」と発音する事が多い。「すめいし」→「すみいし」と口伝でなったものと思われる。

今回参加のメンバーは庄内の未登の山に目が無い鯛金@酒田さんと、農作業の合間に時間を作って急遽参加したlisonさん@旧平田町、山形の修験道に詳しいみいらさん@山形とSONEの4名。役者は揃った。

国道344号:北青沢集落にある川上神社前の大駐車場に朝7時集合する。
林道の駐車スペースを考慮してSONE車で白玉川林道に入る。途中で左折して大禿沢林道へ。こちらは悪路で5分ほど走行すると山側に土砂が堆積して、大型RVのSONE車では通過できなくなる。軽四駆ならOK!
広い路肩に駐車してここから約3km・40分の林道歩きとなってしまった。

途中で3名のゼンマイ採りの方々と出会ったが、登山に来た我々を訝しげな目で見ていた。彼らにとって山は生活の糧を求める場であって、遊びに入るところでは無いのだ。

右岸から滝となって流入する多くの沢床には一面にニリンソウが咲き誇っている。周辺の山肌はブナの新緑が眩しい。単調な林道歩きが終わり林道終点まで着くと、これから登るであろう西尾根方面が垣間見えた。
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林道から沢までは踏み跡があり簡単に降りることが出来る。大禿沢は落ち込みもない平瀬が続き、ザブザブと何回も渡渉を繰り返しながら遡行する楽しい行程である。ここでもニリンソウが多い。
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30分も遡行すると右岸から涼しげな小滝が流入する、
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この僅か先に右:トイシ沢、左:カラマツ沢の二俣となる。合尾根を詰めていけば目的地の注連石に着くはずだ。
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登り始めは薄い踏み跡があり面食らう。完全に薮漕ぎだと覚悟してきたからである。
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気持ちよいブナの森にはムラサキヤシオツツジやタムシバが満開であった。暫し足を止めて見入ってしまう。
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緩急取り混ぜながら登っていくと、左側が開けた地点で,鳥海山が近距離で山頂を覗かせていてビックリ。
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やがて左正面に岩場が見えてくると尾根は消失して急な斜面の登りになる。下降時に注意が必要な場所である。
岩場を巻き終えて再び尾根に出ると、ここからは本格的な薮漕ぎに突入する。この場所は優しい薮だが...
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踏み跡も定かで無くなる笹薮を登り切ると647m峰に着く。周囲は木々に囲まれ、しかも薮の中で展望はない。
少し東側に進むと潅木の間から丁岳が姿を現した。弁慶山以来の再会である。
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この先の薮は大変そうだ!と皆で気合を入れて南東→南と方向を変える尾根を進む。次のピークの鞍部付近の笹薮が背丈を越えて少し大変だった。イヌツゲの繁茂する尾根を外して稜線直下の薮を進み小ピークに乗り上げると...「見えた!!! これは凄い光景だ!!!」先頭を歩いていて思わず声を上げてしまった。

そこには蟻の戸渡りと称しても過言ではない痩せた岩稜と、その奥に注連石の岩塔(中央)が出現したのである。
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右を見るとトイシ沢左岸尾根の新緑の上に750m独標峰が存在を主張している。
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ナイフィリッジの岩稜は危険なので、ザックをデポして通過する。左側斜面は潅木に覆われているので、思ったほど通過は怖くなかった。最後の潅木薮には再び踏み跡が出現。訪れる人が結構いるような雰囲気である。

そして御神体に当る注連石の岩峰に到着。南側は一気に切れ落ちている。
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注連石から先の馬蹄形障壁(郡境)に繋がる尾根もヤセ尾根が続き、一部ではキレット状のところも見られる。
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御神体の上には錆付いた神剣が祀られている。思わず皆で手を合わせて拝んでしまう崇高な雰囲気があった。
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そしてこの神域をより霊験あらたかにしているのが、霊峰:鳥海山の勇姿である。
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しかしながらこんな凄い場所が歴史の影に埋もれて存在していたとは驚きである。
この場所は山伏の修験場であったと言われているが、どんな方々が修験されていたのか?想像を膨らませて見るとより味わい深い場所であった。
多くの山でこうした岩峰を御神体として崇めているが、神が降臨する岩座としてコレほど相応しいと感じる場所を私は知らない。今考えてみると注連石の注連縄は御神体である岩峰に続くベルト状のナイフリッジを指し、総称して注連石となったものと感じている。
でも「碧落の彼方blog」の彼はたった一人で、不確かな情報を元に薮山深く分け入って、何処にあるのか分からないこの場所を探し当てたのである。初めてこの岩峰に触れたときの感激は如何ほどであっただろう? 
彼のブログ情報を元に登った我々とは、難易度も感激度も全く異なるのである。

離れがたい注連石を後にして往路を戻る。薮尾根の下りは早く、意外と早い時間で出合まで下れた。
往路で気が付かなかったがオオイワカガミやコミヤマカタバミなどが可憐に咲きだしていた。
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次の目標は「鬼のカケハシ」である。トイシ沢を遡行すれば現場に着くらしいが、その場所が定かでない。
鳥海山の初期の開拓者で、旺文社エアリアマップの「旧版・鳥海山」の執筆者:池田昭二さんの監修地図によると、かなり上流の二俣の位置になっている。付属の小冊子には”大ゴルジュ鬼のかけ橋”の一行が?

暫く穏やかな沢を登って行くと右岸から顕著な枝沢が流入していた。
その奥には柱状節理の岩壁が見られる。鬼のカケハシはここだ!と思い込み、空身で枝沢に突っ込んでみた。
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最初は小滝が落ちる枝沢も少しずつ奥に入っていくと、驚くほど大迫力の地形であることが分かった。
沢の両岸は高さ20m以上の柱状節理の岩壁がゴルジュ状の側壁を形成し、3〜6mの小滝が次々と連瀑帯となって落ち込んでいる。こう言う局面が得意な小生が試登してみるが、登攀ルート上に大きな残雪のブロックが引っかかった場所で断念。上部をうかがうとゴルジュ内の7m滝上に大きなチョックストーンがある様に見えた。
この地形は連瀑のゴルジュと言うより、クーロアールと名称した方が相応しい気がする。
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滝は登りよりも下りの方が難しい。途中まで登ってきていた仲間を滝下でサポートしながら出合まで戻る。
「いやぁ〜凄い迫力の場所だった!」皆がいいものを見たと喜んでいた。

この枝沢の奥に鬼のカケハシがあるのか?沢が左に屈曲して奥まで観察できなかったのでどうも解せない。
そこで本流を少し遡ってみることにする。

枝沢から10分弱登り、大きな柱状節理の岩壁が右岸に現れたその先に...
「ここも凄い!鬼のカケハシはここかぁ〜〜〜 」
そこは左右から大きな滝が出合う、柱状節理のコップ状岩壁の底であった。下部には膨大な残雪が残っている。
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左から流入する水量の少ない滝は、注連石の南に位置する670m峰に一気に突上げる枝沢である。
この滝の上部には遠目に見ても落差100m以上ありそうなスラブ滝が見て取れた。
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右の本流滝は庄内の名瀑の中でも上位にランクインしそうな無名滝。上で右に捩れているが落差40mはありそうなスダレ状の滝である。この沢は751m独標北側の鞍部が源流となっている。
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皆で思いもかけない素晴らしい風景に見とれてしまった。遡行記録も見たことがないこんな小規模な沢に、こんな名勝があろうとは...
メンバー皆、想像もしていなかった変化に富んだ山歩きができて大満足して帰路に着いたのであった。
沢筋では山菜を少々頂き、至る所に咲いているシラネアオイの薄紫の花に癒されるオマケまでついた。

旧エアリアの小冊子にある池田さんの言葉(出羽丘陵の魅力)が本当に理解できる。
「山と呼ばれながら、山らしさを喪失した山々が氾濫するなかで、今もって千古の自然を保ち続ける出羽丘陵こそ、第一級の山だと思う。」
1975年に池田さんが執筆した当時と、あまり変わっていない山がそこにあった。

ここで余談であるが、帰宅後に鬼のカケハシの実態について、各メンバー喧々諤々の論争となってしまった。
私論であるが、最後に見た双門の滝は大ゴルジュ地形とは言わない。どちらの滝をつめても注連石の南に位置する峰方面にでてしまう。但し左の滝から天に登る如く繋がるスラブ滝は架け橋(梯子)の名称に相応しい。
鯛金さんがネットで検索した結果、「鬼の架け橋」という地名が兵庫県に存在することが判った。
それは二つの岩の上に橋上に乗っかっている岩を指す。
すると最初に間違って入ってしまったゴルジュ状のチョックストーンのある枝沢が、どうも本来の鬼のカケハシとも思うが?(この沢の源頭は注連石南側に突上げていて、階段状で昔の装備でも登れる可能性大。)
それとも沢沿いの柱状節理の岩壁の総称を呼ぶものなのかも? 分からなーい???
まあ民俗学者も研究していない名所なので、あくまで推論の域はでないが、いろいろと謎が謎を生む超面白い山であったことは確かである。(みいらさん得意の文献渉猟で、何とか調べてくださいね。)




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コメント(18件)

内 容 ニックネーム/日時
注連石と鬼のカケハシ、どちらもすばらしいところでしたね。
SONEさんのブログのように紹介してあったら絶対
「行きたい!!!」と言ったのに残念!
それにしても本当に池田さんの言葉通りの場所であったことが
ブログから伝わってきましたよ。
注連石からみる鳥海山は格別ですね。
ebiyan
2009/05/09 19:12
ebiyanさん今晩は。
注連石と鬼のカケハシは、薮山歩きの面白さを凝縮した様なところでした。
歩くだけではなく、知的好奇心も大いに刺激させてくれました。
今回はご一緒できなくてとても残念です。
みいらさんも一番ebiyanさんが残念がるんじゃないの、と言っておりました。
いろいろな場所から鳥海山を見ていますが、この地からの展望は神を感じましたね。
SONE
2009/05/09 20:13
SONEさんお疲れ様でした。
素晴らしい報告ですね。
我々のあの日の行動、そして神の住む領域の雰囲気が伝わってまいります。
もう病みつきになりそうなくらい刺激されてきましたね。
私は今日は(9日)さっそく白玉林道からカメクラ沢を遡行してきました。(ウフ!)
注連石からみた鳥海山どうもどこかで見たようなと思ったらキスカスから
見たのと同じ景色ですね。(キスカスは近いので度迫力ですが)
鯛金
2009/05/09 23:43
鯛金さん、お疲れ様でした。
なんて言っている矢先にもうカメクラ沢に行ってきたのですか(唖然)
この沢の詰めは馬蹄形障壁で、無名ピークから注連石が見える筈なんですねぇ。
何か鯛金さんと同じで、弁慶山地の謎を突き詰めてみたい気持ちになってきました(笑)
鳥海山の姿...本当だ! 地図で見ると鳥海山への延長線上にキスカスがありますね。
このアイヌ語を思わせる山にも是非行ってみたいです。
SONE
2009/05/10 00:03
あらら、もの凄いイメージでしたがいとも簡単に…。
注連石と鬼のカケハシは、名前からしてもゾクゾクですね。
この山入って、またまた謎かけがでてきたようですね。
ebiyanさんの次に残念がっていたスズ7でした。(^_=)
スズ7
2009/05/10 09:28
ブッブッーー!笑
御期待に沿えなくてごめんなさい。
カメクラ沢は詰めるには長すぎて一人では目的のない歩きは飽きて
しまい2/3位の辺りでしょうか2時間とちょっとで引き返しました。
馬蹄形障壁ですか、本当ですねえ。
対岸の・750に上がれなくないみたいですね。
いやいやそんなに甘くはないでしょうきっと。
沢の雰囲気も沢床の植生もトイシ沢に似たところがあって楽しめました。
酒田からの夫婦に出会いました。男性はヘルメットを被ってましたよ。
キスカスは二度3月中旬の残雪期に登っています。
お声をかけていただけばいつでもOKですよ。
ここは大勢で行くのが楽しい所です。
今日は朝から一日中家事に追われっぱなしの鯛金でした。
鯛金
2009/05/10 14:45
スズ7さん今日は。
実はいとも簡単とは言えない場所もありましたよ(笑)
今回は足並みが揃っていましたが、初心者には絶対無理な山だと思います。
でも好奇心を駆り立てられる最高の山でした。
何でも、みいらさんがこの山を再訪したいと言ってましたよ。
私はトイシ沢対岸から岩場の全景を見てみたい気がしています。
SONE
2009/05/10 18:04
鯛金さん今日は。
やっぱり! 流石にカメクラ沢は長い沢だったみたいですね。
池田さんの著書に”馬蹄形障壁から注連石までは数百mの距離だが風雪で顔を上げることは困難だった.."と言うような記載がありましたので気になっておりました。
キスカスは来年の課題ですね。眼前に広がる大鳥海の大観! 見てみたいです。
SONE
2009/05/10 18:11
お晩です。
おお、格調高いレポートですね。道があったら読んだ方は、皆登りたくなることでしょう。
夕べは泊まりの宴会でしたので、今日は山はお休みで図書館に行ってきました。全く文献がなくて薮の中です・・・。

キスカスって響きが良いですよね。
みいら
2009/05/10 19:28
みなさん今晩ハー
SONEさん いとも簡単とは言えない場所って、ロープワークかな(緊張笑)
鯛金さん 一日中家事でしたか、お疲れ様です。ワサビの漬け物ウメェかったです。(^o^)
みいらさん この山を再訪…は何れ。昨夜のドンチャンを胸に図書館かな。
スズ7
2009/05/10 21:21
みいらさん今晩は。
この山に道があったなら、山形県でも有数の変化に富んだ登山コースになったでしょうね。
でも沢の遡行やヤセ尾根の通過などがあるので上級者限定の山ですが...
やはり文献なかったですか! 民俗学者は古老などからの言い伝え等の収集が基本で、危険な現場に入り込めるのは我々登山者だけですからねぇ。特に修験の世界は秘密が多いですし。

キスカス、変った名前の山ですね。個人的には「パシフィック」というLPに入っていた、山下達郎の「キスカ」というかっこいいインスト曲のイメージとダブッてしまいます(笑)
SONE
2009/05/10 21:33
スズ7さん今晩は。
いえいえ...ロープワークじゃなく、例の滝登りで雪解け水のシャワークライムをやってしまいました(長靴の中もビチョビチョ)
その他には、やはり沢歩きに慣れていないと転んで怪我する恐れも充分考えられますね。
SONE
2009/05/10 21:40
?池田さんの郡境縦走の記述ですが、八森西峰を這い上がった時の馬蹄形障壁というのは西川川側から見たあの大きな馬蹄形障壁のことではないですか?対岸に弁慶が見えるはずとある。
カメクラ沢の詰めも地図を見ていると小さいが馬蹄形のような気がしますが。
ここら一帯はこの目で確認してみないとどうも謎が増えるばかり・・・。
融雪期なのに水量はさほどでなく長靴を脱ぐことなく歩けるのがいいですね。
鯛金
2009/05/10 22:11
キスカスは雪が締まった3月が旬でしょう。
ただし、絶対晴れという条件が必要なのは皆さんわかりますよね。
鳥海山のシネマスコープを見なければ価値半減でなんです。
キスカスというのはアイヌ語だろうと私も思っていますが確かめようが無い。
鯛金
2009/05/10 22:21
鯛金さん今晩は。
コメント欄に記載する様な他の人に分かる話題でなないのですが、池田さんの「忘れがたい山」の68頁をご覧頂くと、「八森西峰から一時間で独標771m、ここから北西方向わずか数百mのところに注連石が見えるはずだが...」の記述があります。
15番目の写真でもキレットの左上奥に771m峰が見えますね。
トイシ沢左岸を取り巻く山々からは、確実に注連石の全貌が見えるポイントがあるはずです。

SONE
2009/05/10 23:26
鯛金さん再び今晩は。
キスカスから見る鳥海山は庄内随一ではないかと期待してしまいます。
来年は行きましょうね。
SONE
2009/05/10 23:33
凄い所が有るもんですね〜
藪こぎは得意でないので、行かれませんが、この風景を見たら感動でしょうね〜
素晴らしい!
トシヒコ
2013/03/18 11:34
トシヒコさん今晩は。
ほとんど登山道がない弁慶山地の奥深くに、こんな素晴らしい場所が眠っていたとは驚きました。
薮が得意なokusanさんと連れだって出かけてみてくださいね。
SONE
2013/03/18 21:07

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