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zoom RSS 2009.7.3 五色岳から熊野岳(宮城・中央蔵王)

<<   作成日時 : 2009/07/04 12:32   >>

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ここ数年、夏山の指向がワンパターン化している傾向にある。自分自身を客観的に分析すると、毎年見たい花が同じになっている事実に気が付いた。そんな訳で満開を迎えているであろうコマクサを見たくなり、昨年に引き続き今年も中央蔵王を訪れてしまった(苦笑)

【 7/3 五色岳から熊野岳(1841m)周回 宮城・中央蔵王 】
山交リフト駐車場〜馬の背鞍部〜濁川源流〜五色岳〜御釜〜ロバの耳上部〜丸山沢源頭〜県境1780m地点〜熊野岳避難小屋〜熊野岳〜馬の背経由:山交リフト上駅〜山交リフト駐車場

家を出た時間が遅かったので、今日は馬の背までの最短距離に当る、山交リフト駐車場に車を停めた。
流石に登山を志す者としては、蔵王ハイラインを使って刈田岳直下まで車で登るのは躊躇ってしまった。

午後12時過ぎに駐車場出発。登山道の左側にリフトが動いているが、登山道は花が多いので歩いて登ってもそんなに気にならない。高差120mしかない馬の背までの登りは汗もかかずに登れた。

登りつめた熊野〜刈田間の馬の背鞍部はハクサンチドリの群生地となっている。
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御釜見物の観光客と一緒に火口壁の先端まで歩いていく。そこから先は柵で仕切られているが、他に立ち入り禁止の表示は一切ない。登山装備を持たない観光客の安全を配慮し、進入させないための柵であろう。
ここから濁川の源流地帯までガレた急斜面を一気に下る。指導標やペンキマークは一切ないので、視界が利かない時には危険な道だ。

火山性の岩礫と砂礫が続く下り道であるが、道の脇にはミヤマタネツケバナやマルバシモツケが咲いていた。
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濁川源頭の火口瀬付近はイワカガミが多い場所だが、今年は残雪が少なかったので、すでに花は終わっていた。
小川を思わせる濁川を渡って御釜の南縁に乗り上げる。これから登る五色岳が御釜に壮絶な火口壁を落としている。この崖の高さは最大110mあると言われている。
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西側の馬の背から熊野岳避難小屋にかけての風景。脆い崖が馬蹄形を描いて取り巻いている。
何回見ても、その迫力に圧倒させる風景である。
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五色岳には正式な登山道がない。崩れ易いガレ場の歩きやすい場所を探して登るだけだが、登山の初心者には危険性が高いので、経験のあるリーダーの下で登って欲しい。浮石に乗って足場を踏み外すと、濁川へ一気に滑落する可能性がある。

熊野岳を中心とした中央蔵王には、小規模なコマクサの群生地があちこちに散在している。東北地方では岩手山と秋田駒ケ岳の大群生地が有名であるが、それと比較すると蔵王連峰の群生地の規模は小さい。
しかしながら自画自賛ではないが、自分が慣れ親しんできた蔵王の群生地は、野性味と言う点では勝っていると思う。

そして散在している群生地のひとつに辿り着いた。コマクサの株を痛めないように、慎重に慎重に大きめの石の上だけ歩いて近づき撮影した。それ程コマクサは環境の変化に敏感な弱い花なのである。
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コマクサが今年も無事に咲いていた事に安心して、五色岳の山頂に向かう。
御釜の湖面の上にある山頂は、観光地と化している中央蔵王の姿からは想像できない静かな場所である。

暑くも無く、寒くも無い気持ちよい天気の中、貸切の山頂でゆっくりした。ブユがいない点も落ち着ける要素である。
今日の山は行動時間が短いので、車の運転を考えるとビールはご法度。
そんな時は最近発売されたノンアルコールビールを飲むことにしている。家で飲むと不味いが、山で飲む時にはビ−ルを飲んでいる気分になるから不思議だ。
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休憩しているときに、ガラガラした落石の音を何回も聞いた。今でも脆い火口壁は崩落を繰り返しているのである。
この周辺は未だに地質が安定していない、壮年期の火山であると実感できた。

居心地の良かった五色岳山頂を後に、半時計周りで御釜を廻って、久しぶりに御釜湖畔を目指した。
ガレた斜面の下りは転倒し易いので慎重さが要求される。御釜に流れ込む小沢に沿って下って行くと、前を歩いている5人の中高年登山者をパスした。石の上を飛びながら下る私の姿を見て「かもしかみたいだ。」と言われた。

御釜の直径は350m、水深は25mある。湖畔から見た刈田岳は、魅力的な山容をしていた。
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振り返ると、パスしてきたパーティの背後に馬の背の火口壁が見上げるほどに高い。
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御釜の水を触ってみたが余り冷たくなかった。私が子供時代に家族で御釜湖畔に降り立った事があった。その時は盛夏で異常に暑かったため、親父がパンツ一丁になり、御釜の真ん中まで泳いだ記憶がある。
馬の背で見ていたギャラリーが大騒ぎになっていた(苦笑) 昭和40年代前半のことであったろうか。

ここで少し余談となるが、蔵王のシンボル:御釜と蔵王の火山活動の事について簡単に記したい。
蔵王の火山活動が歴史書物に始めて記載されたのは844年のことである。
それ以降約40回の火山噴火記録が残されているが、その全てが五色岳と火口湖御釜に関するものである。

特に大きな噴火の歴史の一部を挙げてみることにする。
@西暦1227年:芝田郡に石の降ること雨の如し、下道24里の間、人馬これにうたるるもの数を知らず。
A西暦1230年:柴田郡に石雨の如く降ると云う。
B西暦1620年:大焼にて蔵王山三里四方何共なく土底の蟻しきりに焼けたり、鳥類畜類も是当りぬれば皆死申候。
C西暦1624年:近世この時の噴火が最大とされており、刈田、柴田、名取の三郡に降灰を及ぼした。
D西暦1669年:刈田、柴田、名取等数郡に灰を降らし農事を防ぐ。
E西暦1694年:嶽より硫黄水湧き出て仙台領へ押し出し、川魚虫まで残らず死す。
F西暦1821年:御釜の濁水沸騰し、溢水沢々に激流、濁川三丈余の洪水〜翌年稲作に障害を蒙る。
G西暦1867年:熊野岳鳴動し湖水沸騰し泥水二丈余の洪水となり右麓に湧出る温泉ありしも、洪水にて浴客小屋に逃げ残りたるもの三名死亡せり。
H西暦1895年:鳴動に白煙噴出お釜増水、硫黄飛散し松川、白石川の魚死す。
I西暦1895年:鳴動噴煙し青根川崎等灰雨の如し。
J大正7年:御釜は白濁を呈する。蔵王が大噴火するという風評が起り、湯治客は恐れをなしてドンドン下山した。
K昭和14〜15年:御釜湖心部よりガスの噴出を見る。五色岳東麓の島地獄は噴気孔となり噴煙盛んに昇る。
旧新関温泉付近濁川の川岸に強酸性の熱湯を湧出し下流水田に被害あり。
L昭和37年:かもしか温泉の噴気孔近くに、新噴気孔ができ、5米くらいの蒸気を吹き上げている。
以上、「伊藤五郎編・蔵王五十年の歩みとスキーの発達」から抜粋した。

昭和14年の火山活動が契機となって、御釜西側の火口原に蔵王火山研究所という観察小屋が建設されたらしい。そこでは旧制山形高等学校の地質学担当の安齋徹教授が、御釜にボートを浮かべて観測したり、コーボルトヒュッテを前進基地にした厳冬期の御釜の観測までしたと言う。その結果、神秘のベールに包まれていた御釜の水質や水面下の構造が明らかになったのである。(その事は「東北大学山の会編・蔵王ー自然と人間ー」に詳しく記載されている。)

以上の歴史を踏まえた上で御釜を見ていると、”綺麗だー、スゴイ!”と言った感想以外の感慨が湧いてくるのも事実。
近世に磐梯山みたいな巨大噴火はなかったが、御釜を中心とした小規模な火山活動の歴史が積み重なって、現在の風景が形成されたのである。しかし長い地球の歴史で人間の歴史のスケールは微々たるものである。
休火山と言われている蔵王が”再び活動を開始することは無い”とは言い切れない。

久しぶりの訪れた御釜湖畔を後にして、熊野岳東稜への道を目指す。
火口原の北側にも小規模なコマクサ群落がある。この場所のコマクサは大株のものが多く見応えがある。
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火口原から熊野東稜:ロバの耳上部の位置まで登る道は、ガレ場に踏み跡が交錯して分かり難い。
上部にある岩場の手前から右に大きくトラバースするのが正規のルートだ。

このトラバース路周辺は荒涼とした熊野岳の中でも高山植物が多く見られる場所である。
火口原では咲き終わっていたイワカガミの花も健在で、アカモノは今が盛りと咲いていた。
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そして何と言っても多いのがアオノツガザクラ。斜面一面に咲いている場所もあり素晴らしい。
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ミネズオウも中央蔵王を代表する花だが既に残り花のみ。大好きなオノエランも随所で咲いている。
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花の写真を撮っていると、急に丸山沢の雪渓の上部がどうなっているのか気になってきた。
そこで雪渓上部の岩場をトラバースして近づいてみる。ピッケルを持ってきていないので、急な雪渓の登りは危険過ぎてできない。仕方なく途中にある7m位の岩場を攀じ登って雪渓の先端まで辿り着いた。
写真は岩場の途中から見下ろしたロバの耳の岩峰である。
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期待していた丸山沢の上部はガンコウランとハイマツの茂る窪で、両岸にはパッチ状に裸地が点在するところだった。ただの潅木帯では面白みがないので左側の大きな岩まで斜高して正規のルートに戻る。
県境の十字路まで登り、熊野岳北面にあるコマクサ群生地を見に寄り道した。ここの群生地は一週間後が見頃といった感じであった。

再び十字路に登り返し、熊野岳山頂を目指す。平坦な山頂部のコマクサは咲き始め。
湧き上がる暗いトーンの雲が梅雨であることを実感させる。
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山頂からの展望は地蔵岳方面や上山市街地のみ。北蔵王の雁戸山は厚い雲に覆われていた。
一年前に登った中丸山方面も霞んで見下ろせた。
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誰もいない山頂でゆっくりコーヒータイムとする。昨年愛猫が死んだとき、傷心の気持ちを抱きながら登った地蔵岳を眺めていると寂しさが募ってきた。あれから一年近い時が流れた。

山頂からは何人かの登山者が見かけられる馬の背の下りである。植生に乏しい馬の背であるが、御釜の展望が唯一の楽しみ。やはりお約束の御釜の写真は何枚も撮ってしまう。
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馬の背鞍部まで降りてくると往路とドッキングする。この周辺は花が多い。
色違いのハクサンチドリと、やけに色の濃さが目立つコケモモ。
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僅かな場所に少しだけ咲いていたチングルマと、リフトの巻き道に多いウラジロヨウラク。
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たった一日の梅雨の晴れ間を利用して、コマクサを沢山鑑賞できた、楽しいショート登山であった。
昨年から頻繁に登っている熊野岳だが、歩くたびにその良さを再発見できる素晴らしい山である。

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ここからオマケ

まだ時間があったので、お田神湿原に寄り道してみた。湿原を飾るチングルマやヒナザクラは6月中旬が盛りなので、あまり期待をしないで行ってみると・・・

おやおや、ワタスゲの実が風に揺れていて、これはこれで良さ気な雰囲気である。
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そしてチングルマの穂も独特な風情がある。でも花満開のときに見たかったなぁ〜。
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
今日天気だったらこのコース辿ろうかと思っていましたよ。
まだ、お田神湿原に行ったことがないのです。
昨年、お釜を周回してロバの耳に行こうとした時にカモシカがおりましたね。
ここの取り付きのふもとも湿原となって花が咲いていましたね。
コマクサ、先週よりも綺麗に大きく感じます。
あっ、腕の違いかな。(^o^)
マロ7
2009/07/04 13:56
マロ7さんこんにちは。
今回のコースはガスっていると無理ですね。周辺は何処歩いても崖・崖ですし、落石も避けようがありませんから、行かなくて懸命だったと思います。
お田神はあと二週間もするとキンコウカで黄色い絨毯になりますよ。コレもお勧めです。
コマクサは丁度今が盛りでした。決して腕の違いではありませんから(笑)
SONE
2009/07/04 17:09
荒涼とした石砂礫地にコマクサが引き立ってよい写真ですね。
蔵王は気軽に行けるし、行くたびに違った感動も慰めももらえて
住んでるそば蔵王があってよかったーって行くたびに思ってます。
蔵王の噴火の歴史すごいですね。
そのおかげで今の景観があるんだけど、これ以上は爆発してほしくないです。
キリンのFREEはまったくのノンアルコールということで私も飲んでみたことがあります。
宣伝しているくらいおいしいとは思いませんでしたが、山ではまた違った味になるでしょうか。
時々昔はよく飲んでいたビールの味がむしょうに懐かしくなります。
ebiyan
2009/07/04 18:07
ebiyanさん今晩は。
コマクサ、綺麗だったですよ〜。
蔵王連峰は変化に富んでいるので、隅々まで探訪するとスルメみたいに味わいが増してきますね(笑) このところ蔵王に惚れ直しています。
気象庁の噴火警戒レベルっていうのがあるんですが、蔵王は入っていませんでしたよ。
少なくても我々が生きている内は大丈夫でしょうね。
キリンのFREE、あれは不思議! 山で飲んだとき限定でビールを飲んだ気分になります。
でも後味は第三のビール以上に悪いです(苦笑)
SONE
2009/07/04 18:43
蔵王のコマクサ、今の時期が旬なんですね〜、高嶺の花々が蔵王の開放的な山容によく似合っています。
行ってみたくなりました・・・
HAMA
2009/07/05 08:11
HAMAさんこんにちは。
蔵王のコマクサもなかなか見応えがあるでしょう。
観光地的なイメージが強い中央蔵王ですが、視点を変えてみると魅力満点です。
HAMAさんお得意のMTB使ってエコーラインを一気下りなんて面白いかもしれませんね。
SONE
2009/07/05 18:28
沖縄で飲むオリオンビール、旨い! FREEも…
そういうものでしょうかね、飲むときの気持ちとロケーションだよ。
って喰いついたのソコだけかよ?!ってか。
タッシー
2009/07/05 19:30
タッシー今晩は。
FREEは、とても旨いとは言えないけど、山=ビールの方程式にはハマッテいるかもね。
山頂でコーラは絶対に合わないもんね(笑)
SONE
2009/07/05 21:33
コマクサ綺麗ですねえ。先日私が行った時とえらい違いだ。(爆

ノンアルコールビールは山では許せますか。昨日は「その他の雑種」を凍らせて持って行ったのですが、融けなくて難渋しました。
みいら
2009/07/06 09:02
みいらさん、こんにちは。
今回は標高1600m位がコマクサの見頃でしたよ。熊野山頂付近はあと10日前後が最盛期みたいです。そう言った意味では例年と花の時期は一緒でしたね。
私は行動時間が短い山限定で、ノンアルコールビールを持っていきます。
ただ単にビールを飲んだ気分を楽しむためで、苦肉の策ですね(苦笑)
SONE
2009/07/06 17:11

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