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zoom RSS 山岳映画の傑作だった 『アイガー北壁』

<<   作成日時 : 2010/05/23 23:04   >>

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今年2月17日の拙ブログで、映画『アイガー北壁』の記事を紹介したが、当時は京名阪中心に数館でしか上映されないはずだった当作品が、仙台のチネ・ラヴィータにて5月22日から6月4日まで上映される事になり早速初日に観てきた。

SONE的 『アイガー北壁』映画レビュー
画像


2003年のイギリス映画で『運命を分けたザイル』と言う山岳映画の傑作があった。
それはザイルパートナーから死んだものとされて、クレバスの奥深く置き去りにされたクライマーの決死の生還劇であったが、リアルなクライミング映像が素晴らしい作品であった。

邦画では昨年上映された『剣岳 点の記』の迫真の山岳映像が記憶に新しい。
どちらの作品も現地ロケにこだわり、ハリウッド映画の様なCG多用の作品とは、作品の重みが違っていた。

そして今回は真打『アイガー北壁』の登場である。近年のドイツ映画はアカデミー賞外国語映画賞を受賞する作品も多く、世界的にも注目を集める重厚な作品が持ち味である。
実はこの『アイガー北壁』、2008年に公開された作品で、本国ドイツで公開されるとロングランヒットを記録したと言われる。

作品の内容は前回の記事でも述べたが、ベルリン・オリンピック開催直前の1936年に、ドイツ人の山岳猟兵のトニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサーが挑む「ヨーロッパ最後の難所」アイガー北壁が舞台の死闘劇である。

天候を待っていた二人は月夜の晩に登攀を開始。彼らの直ぐ後方を二人のオーストリア隊が追う。
4人は第二雪田を抜けて順調に高度を上げていくが、オーストリア隊の一人が落石を頭に受けて負傷。
その後負傷した仲間を助けながら悪天候の中、生きて帰るための決死の脱出行が始まる・・・・・


この作品の最大の見所はあまりにリアルな山岳映像にあると言っても過言ではない。
「殺人の壁」とも呼ばれたアイガー北壁の非情な姿がスクリーンの中にこれでもか!と展開していく。
中でも赤い岩壁にある難所をヒンターシュトイサーが振り子トラバースで抜ける場面は、高所恐怖症の方なら目を開けて観ていられないほどの迫力がある。どのようにして重い撮影機材を岩壁に設置して撮影したのであろうか?
俳優の方々は一年間クライミングの修行をして、今回の撮影にあたったとも聞いている。
撮影スタッフ、俳優、スタント全ての粘り強い努力がなければ完成しなかった作品だけに、物語の説得力が違う。


そして悪天候下の北壁の、大瀑布を思わせる巨大なちり雪崩のシーン、吹雪の中でろくな装備のなくビバークを重ね、手や顔が凍傷のために黒く変色していくリアルな描写も凄まじかった。

映画では麓のホテルで見世物の見る様にたむろする、セレブ達や報道の人間たちを絡めて物語が進行していくが、当初はナチスのプロパガンダ的に利用されていた北壁に挑戦する彼らが、実際には自分達が登りたい衝動から登っているのが分かって面白い。彼らは国の威光ではなく、誰も登っていない壁に挑戦したかっただけなのである。

また当時の貧弱な装備の数々には驚くものがあった。麻のザイル、手製のハーケン、ヘルメットなしの登攀、ツェルト&寝袋なしのビバーク、毛の手袋、布製のヤッケ、肩がけの確保など等・・・
今なら日帰り往復登攀してしまうアイガー北壁とは別物の世界が広がっている。


そして物語は衝撃のラストへと突入する。誰がこの残酷な結末を予想できたであろうか。
とてもこれが事実とは信じがたい神の皮肉なシナリオに絶句。
映画を観ながらなんとかしてあげたい衝動に駆られたのも久しぶりであった。

最後のエンドロールでかかる曲も必聴で、当時ドイツ国内で流行していた曲らしい。
「前を目指せ、そうすれば幸せが」的な歌詞であったが、劇中で新聞記者がピアノ弾き語りで歌っていた曲で、これ以上皮肉に溢れた映画主題歌を私は知らない。

『アイガー北壁』 60席程度しかないミニシアターで観たが、家庭のテレビで見るのとは迫力が違っていたであろう。
登山愛好家だけでなく、映画好きな方なら是非観ていただきたい秀作であった。
次の山岳映画は邦画の『岳』であろうが、期待し過ぎると失望しそうな作品かもしれない。
そもそもあの漫画自体が相当無理のある人物設定になっているからなぁ〜(苦笑)

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『アイガー北壁』 なぜ2年後ではダメなのか?
 【ネタバレ注意】 ...続きを見る
映画のブログ
2010/05/28 01:47

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
フムフム、なかなか面白かったって事ね。
『岳』はねえ、配役がね…それぞれの個人は好きだけど
原作に対するキャストとしては…
タッシー
URL
2010/05/24 17:22
タッシー今晩は。
実話を映画化した作品だから全部書いても良かったのだけど、描いた舞台がアイガー北壁だけだったから「剣岳 点の記」よりも視点が定まって映画に入り込めたね。最後は手のひらに汗をかいていたよ。
『岳』は完全に配役ミスだね。公開前から出来が読めちゃってるよ。
SONE
2010/05/24 19:47
ザイルの数メートルが生死を分ける。せっかく仙台で上映しているので見たい映画です。リアルでまじめなところがドイツ映画なのでしょうか。
tom
2010/05/24 19:57
tomさん今晩は。
仙台では上映しないと諦めていた映画だったので、観賞できたことで更に思い入れが大きくなった作品でした。史実なので結末は分かっているのに、それを迫真の演技と映像で見せてくれる素晴らしい映画です。是非tomさんもご覧になってくださいね。DVDだけで観るのは勿体無いですよ。
SONE
2010/05/24 21:35
情報有難うございます・
観にいきたいですよ・・
登山技術・装備等々今とは
はるかに
違っていたでしょうね・
実話とか・・
ク〜
2010/05/25 05:34
ク〜さん今晩は。
上映期間が短いので早めに観賞したほうが良さそうです。
今から70年前の登山装備を見るのも面白いですよ。
汽車賃うかすために700kmの工程を自転車でアプローチしたのも驚きでした。
衝撃の最後はどんな優れた脚本家でも書けないでしょうね。
SONE
2010/05/25 20:25
こんにちわ。いつも楽しく拝読しております。
先日やっと観賞してきました。あまりの緊張の連続で見終わった後はぐったりでした・・・。
結末は知っていても、もしかしたら!!と思いつつ・・・。
映画の世界にどっぷりひたってしまいました。
今年から登山を始めたまったくの初心者です。車をもっていないので公共交通機関で行くことのできるお勧めの山を教えていただきたいのですが。
本やネットを見ても東北の山は登山口までのアクセスが難しいなぁと悩み中です。
夫婦で低山から始めていますが、すっかり山の魅力にはまってしまいました。
記事に関係のない質問で申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
仙台市青葉区在住です。
いつの日かSONEさんの山歩き並に登山がしてみたいと思いつつ、トレーニングに励んでいます。
キーン
2010/06/01 15:24
キーンさん初めまして。コメントを頂き有難うございます。
とても実話とは思えない内容の作品でしたよね。家庭用のテレビではあの迫力は出ないと感じました。
さて、とても難しいご質問ですねぇ(笑) 今の世の中、東北の山登りで車がないのは大変です。
私自身も最近は公共交通機関を使って登山した経験がない状態なので、多少いい加減に候補の山を羅列したいと思います。(JRやバス利用で考えました。)
@吾妻連峰(西吾妻山、一切経山など) A安達太良山(奥岳起点) B蔵王連峰(白石駅や山形駅からバスで中央蔵王へ) C仙山線利用で面白山や南面白山 D泉ヶ岳
参考になるか不安ですが、その他の山域ですと日帰りでは無理でしょうね。
では、今後も登山を楽しんでください。(余談ですが生協などの登山ツアーを利用するのも手では?)
SONE
2010/06/01 21:23

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