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zoom RSS 書評 『還るべき場所(笹本稜平著)』

<<   作成日時 : 2012/09/12 19:07   >>

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最近読んだ笹本稜平の『天空への回廊』は、映画化された『ミッドナイトイーグル』を更にスケールアップさせた山岳小説で大変面白かったが、エベレストを舞台に繰り広げられるスパイ小説さながらの展開はストレートに山岳小説とは言い難い内容であった。
この作家が真の山岳小説を編むとどんな物語ができるのであろうか? 読んでみたい。
そんな願いをかなえてくれたのが『還るべき場所』であり、近年の山岳小説では出色の出来と思う。

書評 『還るべき場所(笹本稜平著)』

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【 内容 】

世界第二位の高峰K2。未踏の東壁ルートに挑んでいた矢代翔平は、登頂寸前の思わぬ事故で最愛のパートナーの栗本聖美をもっとも哀しい形で喪ってしまう。
雪崩に遭い、宙吊りになった聖美が、翔平を救うために自らロープを切ってしまったのだ。
山で死ぬ事を厭んでいた聖美のまさかの選択。
事故から4年、失意の日々を送っていた翔平のもとに、かつての山仲間で、トレッキングツアー会社を経営する板倉亮太から、ブロードピークへの公募登山で客を登らせた後に、あの因縁のK2の東壁を再び攻めることを持ちかけられる。
聖美を喪った事実を受けとめ、引きこもりに近い生活から抜け出すために、翔平はアマチュア登山ツアーのガイドとして再び山に向き合うことになる。


【 書評 】

久々に骨太の山岳小説に出会った。
上記の内容だけ見ていると、主人公の矢代翔平の心の再生の物語と感じてしまうが、本小説は還暦を過ぎて公募登山に参加する企業家:神津邦正と、翔平と同様にK2での遭難を経験している神津の秘書:竹原充明も重要な登場人物として絡んでくる。
物語の主な舞台は公募登山のブロードピークで、激変する天候によって翻弄される仲間たちの記述が迫真に満ちている。

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公募登山の登山界に置かれた微妙なスタンスも取り込まれているが、そのメンバーが一致団結して最悪の事態を乗り切ろうと頑張る姿に感動した。

そして実力が伴わないのにアルパインスタイルでブロードピークを登ろうとしている、アルゼンチンの3人組パーティの動向が更に物語を厚みのあるものにしている。

終章では亮太とパーティを組んでK2に再び挑むが、そこで自らロープを切断した聖美の真実の姿が浮かび上がってくる。
「探し求めていた本当の聖美にようやく出会えた気がした。それは翔平の新たな人生の始まりでもあるようだった。」
素晴らしい読後感が味わえる秀作だと思う。

おまけ・・・
8000m14座登頂の竹内洋岳さんのブログからブロードピークの動画を拝借しました。





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コメント(6件)

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動画も見ました・・何度も諦めかけた と言ってますよね。。
そこら辺の山でさえそう思う非力な私ですからレベルは雲泥の差ではあるけど頂上まで制覇した達成感は同じ種類なのかな、って思いました。
この本、読書好きとしては是非読んでみたい衝動に駆られてます!!
とむかの
2012/09/12 21:30
とむかのさん今晩は。
竹内さんは現在では日本一のクライマーですよ。
そんな彼でも8000m峰の無酸素登頂は厳しい世界なのですね。
でもとむかのさんも山を始めたばかりで、見るもの聞くもの全てが新鮮な世界なんでしょうね。
読書と山が好きならこの本はお勧めですよ。何故山に登るかと言うひとつの回答も用意されています。
SONE
2012/09/12 22:14
 おはようございます。

 早速注文しました。楽しみですね〜。(^^
ファーマー佐藤
2012/09/17 09:58
ファーマー佐藤さん今晩は。
600ページを越える小説ですが、面白いので一気に読破してしまいましたよ。
SONE
2012/09/17 18:58
SONE師匠、ご報告致します。
船形山リベンジしてきました★無事帰還!
・・・というか、無知で山登って道迷い遭難の昨年。今回登って「何故?何故?どうしてここで迷うわけ?」って感じました

今日のニュースで神室岳で高齢の男性が救助されたと聞きホットしました、良かったです。ふとしたときに我々初心者がおこしていまう道迷い・・・。
反省してます。
何はともあれ一昨日はお天気も最高で 御来光岩からの素晴らしい眺めに本当に感動でした・・・
嬉しくての報告でした!!
とむかの
2012/09/17 20:28
とむかのさん今晩は。
理想的な天候の時に登れましたね。良かった良かった・・・
山に少し慣れてきたので、昨年道迷いした場所を見ると不思議な感じがしたと思います。
道迷いは根本的に地図を持たない、コンパスを持たない登山者が起こしている場合が多いですね。
とむかのさんが御来光岩にたどり着いた時、私は北西側の沢筋を黙々と登っておりましたよ。
SONE
2012/09/17 22:51

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